生駒の家 築80余年民家改修

 

奈良町西村邸 築100年町家改修

 

桜井の家 築70余年民家改修

 

茶寮幾世屋 築100年町家改修

 

生駒の家 築50年民家改修

 

天理の家 築135年民家改修



生駒の家

築80余年の民家改修工事  奈良県生駒市

 

茅葺き屋根を鉄板で覆われた築80余年の民家です。敷地内には主屋のほかに、離れ、納屋、土蔵、ガレージが建っています。数年のあいだ空き家になっていた民家をお施主様が購入され、都市部から転居されました。現代の暮らし方に合う住まいになるように、主屋を中心とした改修工事を行いました。

昭和の頃に改修が行われており、何室かは建材が使われていたり土間に床を張られていましたが、それらは撤去して構造を現わし、元の民家の形態に近い形に戻しました。主屋は三列六室型の整形六間取りで、縁が南から東に回っていました。縁との間の建具は取り払い、南側3室+縁側を広い居間食堂空間にしました。北の3室は土間側から、ホール・トイレ、キッチン、主寝室の並びにしました。主寝室やホールは元の鴨居の溝を利用して引き戸で仕切っています。床は全体に18㎝ほど下げ、土間に床が張られているところは土間に戻しました。通り庭も復活し、家族用の玄関は通り庭からの出入りが出来るようにしています。室内建具は古建具を多用していますが、鴨居を上げたことにより内法高さが高くなっており、建具に木を足して建具の成を高くしています。

開口部の面積が大きいため断熱性が高いサッシを入れ、熱還流率を1.5ないしは1.9以下として先進的窓リノベの助成も受けています。床天井と北側の壁面には断熱材を入れています。

居間食堂に容量の大きい薪ストーブを設置。お住まい後、断熱性能の高さを実感しているとのことでした。
構造補強は仕口ダンパーを採用しました。

2023年 

設計:FRONTdesign

施工:(株)伏見建築事務所

桜井の家

築70余年の民家改修工事  奈良県桜井市

 

南北に細長い敷地には主屋、門屋棟、奥には納屋棟、そして一番南側にはブロック造の平屋建てハナレ棟が建っていました。お施主様は10数年前にこの家を購入して都市部から転居してこられました。近所の畑を借りて野菜づくりをされていましたが、南側のハナレ棟を解体して敷地内にキッチンガーデンを作ることが改修後の暮らし方のご希望のひとつでした。ハナレ棟を解体すると敷地全体の風通しがよくなり、明るくなったように思います。

主屋は、内部の天井を解体すると梁にヒノキの磨き丸太が多用されていました。化粧材としても十分美麗な材でしたので天井は張らずに梁を化粧で現しにすることにしました。構造体の大きな歪みや痛みは無かったのですが、側面側の土台に傷みが見られたため新たな桧材に入れ替えました。

外部は全体に土壁の上にモルタルが塗られていましたが、モルタルは撤去し焼杉板張りにしました。内部の壁は土壁真壁の部分が大半でしたが、過去の改修でボードなどの建材が張られているところもありましたので、建材類は撤去し土壁や砂漆喰、板張りなどの自然の素材で仕上げました。

構造体の基本的な区分は変えずに間取りの変更を行っています。過去に数度の改修がされてきた痕跡がみられ、南の縁側部分だったところは半分が玄関スペースに改修されていました。南から室内に入る光の量が少なかったため、玄関は門屋棟側に移動し南側開口を大きくしました。外部にはウッドデッキを設け、新たに植栽した雑木の庭に出やすいようにしました。窓際にはペレットストーブを設置しています。

敷地奥の納屋は、1階の土間スペースにキッチンを設け、つし2階に上がる階段を新たに設置し、2階も杉の床板を張って室として使えるように改修しました。

居住部分は断熱改修、および構造補強を行っています。

2020年 

設計:FRONTdesign

施工:(有)武中建設

桜井の家 民家改修工事ブログ


奈良町西村邸

 

築100年の町家改修工事  奈良市

南北に細長い鰻の寝床状の敷地には、5つの建物(主屋、辰巳蔵、茶室棟、離れ棟、納屋棟)と4つの庭があります。主屋は1列3室型で片側に奥まで続く通り庭があり、その先には敷地奥の離れ棟と納屋棟に通じる渡り廊下があります。工事はすべての建物と庭の整備等、敷地全体の改修工事になりました。

主屋の表構えは昔ながらの伝統的な意匠でしたが、辰巳蔵は車庫として使われていたのでシャッターが設置されていました。伝統的な意匠に戻すために過去の状況を調査し、シャッターを撤去して全面格子に改修しました。今回の工事では奈良市の歴史的風致形成建造物整備事業における修理助成を受けるため、伝統的意匠に復原することも条件の一つでした。主屋前面に設置されている「鹿除け」と呼ばれる名栗格子は傷みが激しかったので新しい名栗材で作り直し、2階の窓に設置されていたルームエアコンの器具は撤去して格子を復原しました。

改修後は、辰巳蔵を喫茶室とし主屋2階を民泊の宿泊室として活用する計画としました。喫茶室の壁は砂漆喰で仕上げ清潔感のある明るい空間にしました。その他の壁は真壁のままの土壁が多く残っており、大半は左官の塗り替えのみになりました。ボード等の建材が張られているところは、建材を撤去して土壁に戻しました。

主屋通り庭の奥は土間台所として使われていて天井が張られていましたが、天井は撤去して火袋(通り庭の吹き抜け)を復活しました。

茶室棟は数寄屋建築で、自然の風合いを感じる趣のある材が使われており良い仕事がされていました。奈良町は茶の文化が暮らしの中で継承されてきた地で、風流な暮らしが伺えました。茶室内部は土壁を塗り直し、化粧鋼板が張られていた外壁は土壁に戻しました。土庇を支える袖壁など、欠損部分は復原しています。

全体的に構造材の傷みが見られたところは取り換えや根継ぎを行い、構造補強および断熱改修も行っています。

2019年

設計:FRONTdesign   施工:(有)武中建設

 

 「おばあちゃんちから巡る、これからの奈良町」築100年 奈良町の町家 民泊・喫茶・レンタルスペース

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奈良町西村邸 町家改修工事ブログ


生駒の家 

築50年の民家改修工事  生駒市

長く首都圏で暮らされていたお施主様は、自然豊かなところで子育てをする暮らし方を望まれて奥様のご実家の地である生駒に転居されてきました。歴史のある集落の中で民家を購入され、建物の1階全体と2階の一部の改修工事を行うことになりました。
整形四間取り(田の字型)で南側に縁側のある間取りで、柱には良質な桧が使われており歪みもほとんどありませんでした。四間取りの畳の間の利便性(可変性)を最大限利用することも改修の主旨になり、四間取りのうちの三つは畳の間で残し、一室のみを杉の厚板張りの床に改修し、家全体を温める薪ストーブを設置しました。キッチンは、奥様が薬膳料理教室をされていることもありL型キッチン+アイランド作業台の広々としたキッチンに改修しました。北向きの窓が小さく暗くなりがちでしたので、天井の上部を一部吹き抜けにして(二階屋根は落ち棟部分)、天窓を設けました。明るさを取入れると共に上昇気流で生じる風の通り道になり、夏場の暖気抜きの窓になりました。二階の吹き抜け周りの壁には障子の窓を設け、空気の流れを作りました。この窓から二階の様子をうかがうこともできます。

元の階段がかなり急こう配で階段の位置も使いにくい場所にありましたので、玄関ホールに新たに階段を設置しました。また、玄関横の広い収納室にボルダリングの壁をつくりました。2階まで壁を登って上がることができます。お子さまたちの部屋は2階になりますが、昼間は1階の四間取りのどこかでそれぞれが自由に過ごしているとのことでした。

構造の一部補強のほか、冬の寒さを解消するために断熱改修も行っています。

2018年 奈良県生駒市

設計:FRONTdesign

施工:寧楽工舎

生駒市のサイト「good cycle ikoma」にも紹介されています。

食も住まいも、自然素材がいい。生駒で見つけた家づくりの軸

生駒の家 民家再生・セミDIY  民家再生工事ブログ


天理の家 

築135年の民家改修工事  天理市

 

明治中期に建てられた主屋を中心とした改修工事です。広大な敷地内には複数の建物(主屋、門屋、蔵 2棟、離れ 4棟、長い納屋棟、トイレや浴室などの水回り棟等)が、主屋奥の北庭(作業の場になる暮らしのニワ)を取り囲むように建っています。主屋には玄関正面に幅4メートルの通り庭があり広い土間が真っすぐ北庭まで通じることができるのですが、車が侵入できるスペースが無かったため北庭まで通じる車路を新たに作る必要がありました。門屋横の倉庫スペースに外部の意匠を損なわない木製のシャッターを設け、主屋東の落ち棟部分は土間に改修して開口を設け、車の出入りが可能になるような車路兼倉庫に改修しました。

主屋内の通り庭部分は床を張り、それまで外部の別棟にあった水回り(浴室、洗面所、トイレ)を室内に作り、2階(つし2階)への階段も新たに設けました。居室部分は整形六間取の和室空間で、5寸角の柱や太い差鴨居の通る立派な建物です。奥の座敷はそのまま残し、その他の部屋は桧の板張りに改修してLDK空間としました。南と北にあった縁側は室内空間に取り込みました。南北の風が通り、夏場はとても涼しいようです。玄関横には来客用の小間の和室を新たに設けました。つし2階は床に土が乗っておりはしごで上がる物置場として使われていましたが、土を下ろして新たに階段を設けて居室として使えるように改修しました。

構造の区画は変えずに計画をしていますが、限界耐力計算で構造の検討を行った結果、六間取りの一部に新たに壁を設けています。また、建物中央の柱に沈みが見られ、そのことが原因で建物に歪みが生じていました。補正の方法を検討し、広い面積で柱の荷重を受けることができるように柱にかかる荷重に合わせて柱脚に大きめの基礎を設置しました。

構造補強ほか、冬の寒さを解消するために断熱改修も行っています。 

建物の歪みや冬の寒さなど不具合も生じていたので主屋を解体して建て替えることを検討されていた時期もあったそうですが、改修することにより現代の暮らし方に合う住まいになったと思います。

2018年 

設計:FRONTdesign

施工:(株)伏見建築事務所

天理の家 民家改修工事ブログ


茶寮幾世屋 

築100年の町家改修工事  奈良県生駒市

 

生駒駅南側の宝山寺参道にある幾世屋さんは、代々この地で和菓子店を営んでこられました。この界隈は昭和の終わりのころまでは大正時代に建てられた古い町家が軒を連ねていましたが、駅の再開発とともに町家が取り壊され、ビルやマンションに建て替えられているところが多くなってきました。この建物もビルへの建て替えを勧められることが度々あったそうですが、昔ながらの建物の良さを残しながらお店をリニューアルすることにされました。
改修前はいわゆる看板建築で建築物の1階正面部分の部分のみを店舗として使用されていましたが、構造補強をして1階全体を利用することになりました。建物奥の空地に坪庭をつくり、庭を見ながらお茶を飲んでいただける茶寮空間を新たに設けました。生駒の繁華街の喧騒を忘れるような静かな空間です。老舗店舗の貫禄を残すとともに、女性店主の洗練された和菓子屋さんのスタイルをつくることがテーマになりました。

2011年

設計:FRONTdesign

施工:(株)伏見建築事務所

茶寮幾世屋 町家改修工事ブログ

 国産材・県産材  

木の住まいの設計

一級建築士事務所 FRONT design 

奈良県生駒市北田原町1052-2

 岩城由里子

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